食物繊維とは、一般的に、人の消化酵素では消化されない食物中の成分のことを指します。
食物繊維は、消化されずにそのまま排泄されるので、便通の改善や大腸内の環境改善に効果があるなどの生理作用があります。
また、血糖値の改善や血中コレステロールの改善にも効果が認められています。
食物繊維の効果
人の腸内には善玉菌と悪玉菌と呼ばれる腸内細菌が存在しています。
善玉菌にはビフィズス菌など、悪玉菌にはウェルシュ菌などがあります。これらの腸内細菌のバランスは人の健康状態に深くかかわっています。
食物繊維を取ることで、この善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことができるのです。
また、食事の時に食物繊維を取ることで、糖の吸収速度が緩慢になり、血液中のグリコール濃度が急激に上がらなくなります。これによってインシュリンの分泌が抑えられ、糖尿病の予防や治療に効果があると考えられます。
同様に、食物繊維はコレステロールの吸収を低下させるので、血液中のコレステロール値を下げ、動脈硬化を予防する効果があると考えられています。
他にも大腸がんを抑制したり、食品添加物など、体内に取り入れられた毒物を吸着して排出する働きがあります。
この記事に書いてあること
食物繊維の種類
食物繊維は大きく分けると二種類に分かれます。
一つはセルロース、へミセルロース、リグニンなどの水に溶けない「不溶性食物せんい」と呼ばれるもので、穀物、野菜、イモ類、豆類などに多く含まれています。
もう一つはマンナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウムなどの水に溶ける「水溶性食物せんい」と呼ばれるもので、こんにゃく、果物、海草などに含まれています。
食物繊維は熱を加えて調理してもあまり減少することはありません。
現代人は食物繊維が不足しがちだと言われています。
目安として1日20~25gくらいを取れるようにするとよいでしょう。
現代人の食生活と食物繊維
昔の日本人は、食物繊維を上手に摂取できる食生活をしていました。
これは世界と比較してみても、かなりその量は多かったのです。
ところが、戦後に食の欧米化が進んだことと、食生活が豊かになったこと、野菜の摂取量が減ったことなど、様々な要素が重なることで、食物繊維の摂取量が格段に減少してしまったといいます。
とくに昔の日本と現代の日本とで、食生活に劇的な変化をもたらしたのが、「精白穀物」を食べるようになったことです。
昔の日本では米は玄米や雑穀(ヒエ・アワ・ムギなど)が主食であることが一般的でした。
実は、精白段階で捨てられる「穀物の外皮」にこそ、もっとも食物繊維が豊富なのです。
また「麦飯」は昔の日本の家庭ではポピュラーなもので、値段も安く健康にも良いということで、多くの家庭で食べられていました。
しかし、現代になって麦(この場合は大麦)は食用としてはあまり流通せず、逆に精白米よりも高価になったことで、さらに需要が減ってしまったのです。
現代の日本人の健康を脅かしている様々な生活習慣病は、この「食物繊維摂取の減少」と無縁ではありません。
現代人がこのままの食生活を続けた状態で健康を維持するためには、積極的な食物繊維の摂取が必要なのです。
まとめ
ほんの20~30年前まで、食物繊維は「食べ物のカス」だと考えられており、栄養学においても重要視されていませんでした。
しかし今では食物繊維の重要性が発見され、炭水化物・タンパク質・脂質に次ぐ必須栄養素として積極的な摂取が推奨されています。